昭和の時代に海外から半ば皮肉をこめて言われていたことに「日本人は貯蓄好き」というのがあります。自国の商品を輸出しても思うように買ってくれない日本への抗議の意味が含まれていたのだと思います。実際、当時の日本は貯蓄好きでした。家計貯蓄率が20%を超えていたのです。

家計貯蓄率は{(可処分所得ー消費支出)/可処分所得}によって算出されます。給与のうち実際の手取り分が可処分所得だと思っていただければOKです。手取り25万円の人が月々5万円貯金する、そんなイメージでしょうか。

が、それも今は昔のお話。実は長期的に下落が続いており、2013年にはなんとマイナスになってしまいました。このときは消費税アップ前の駆け込み需要が原因といわれており、2014年にはプラスに転じましたが、その数値はわずか0.1%、実質ゼロですね。さてこうなった理由は何だと思いますか?

主な理由として挙げられるのは、高齢者世帯の増加。高齢者世帯の多くが貯金を取り崩しながら暮らしています。年金収入だけでは赤字だからですね。その比率が増えれば自然と日本全体の家計貯蓄率が下がっていくわけです。

その一方で、現役世代の貯蓄率は以前より上昇しているとのこと。おおよそ25%程度と言われています。住宅ローン、教育費と負担が大きいのにこの数字は立派です。が、これは老後への不安の表れとも言われており、一概には喜べません。さらに現役世代といっても、いわゆるシングルの増加が貯蓄率を押し上げているとの指摘も。住宅ローン、教育費の負担がない分貯蓄に回せるわけですね。

人口構造の変化で、他の国々と比べてかなり歪な状況になっている今の日本。所得の伸び悩みがさらに継続しそうなので、それがさらに進みそうです。