海外から日本を訪れる観光客にとって、観光ルートの王道は、東京~富士山~京都という、いわば昔の東海道です。新幹線という時間の計算しやすい移動手段もあり、計画が立てやすいので「ゴールデンルート」なる呼称もうなずけます。
さてそれとは別に「サムライルート」なるものもあります。「サムライ」という言葉から、関ケ原に代表される合戦場巡りか、それとも姫路城を始めとする名城巡りかと想像してしまいますが、実際は全く違います。
というのも命名者は海外の旅行関係者。海外の人が思い浮かべる「ニッポン」に関する言葉の中から有名なものを選んだというのが正解でしょう。たとえば100種類の海外ツアーを販売している日本の旅行会社が、スペインの観光ルートに「フラメンコルート」と名付けるようなものです。
で、その「サムライルート」なのですが、名古屋又は松本から高山を経由して世界遺産である白川郷へ、そして最後に金沢や富山といった北陸へと向かいます。なかなかマニアックなルートで、日本人自体がこのような観光ルートをあまり選ばないように思います。刀鍛冶で有名な関市で途中下車くらいしないと、「サムライ」らしくありません。
このルートはヨーロッパの人たちを中心に人気です。高山市内の古い町並みも時代劇を見ている層にとっては立派な「サムライ」ですし、白川郷は「江戸時代の日本」を偲ぶノスタルジックかつファンタスティックな空間ともいえますから、往時の日本を知りたい海外旅行者にとってはとても魅力的なルートです。
日本人なら絶対に「サムライルート」という発想は出てこないだけに。名付けた海外旅行会社のセンスに脱帽してしまいますね。