平成28年度の恵那市実績98件で約600万円、全国1位は528千件強で約73億3300万円、いったい何の数字だと思われますか? ヒントは皆さんも利用されている可能性があります。

答えは「ふるさと納税」の寄付件数とその寄付金額。恵那市の数字だけを見るとまあこんなものかと思いますが、全国1位の数字には驚くほかありません。ちなみに1位は宮崎県都城市です。

ふるさと納税制度による節税メリットは広く知られるようになりましたが、それ以上に注目なのが、「返礼品」の豪華さ。還元率という表現が正しいのかは疑問ですが、都城市では8割を目標にしていたとのこと。10万円の寄付で8万円相当の返礼品は本末転倒の感なきにしもあらずですが、都城という町を全国にアピールするための宣伝活動費と思えば、充分にもとは取れているのでしょう。こういうものには口コミが必ずついてまわりますから「都城市にふるさと納税すると返礼品が凄い!」というのはネットを通じてあっという間に広まります。特産品のPR、さらに特産品の安定需要にともなう地域経済への効果等々、その波及効果は想像以上です。

ということで全国の地方自治体があの手この手で返礼品に力を入れるようになり、もはや生まれ育った故郷への恩返しに納税するというケースはあまり見られなくなりました。その昔、某特撮ヒーローのカード目当てにお菓子を買って、カードだけを取って肝心のお菓子は食べずに捨ててしまうことが社会問題となりましたが、歴史は繰り返されたといえるでしょう。

その結果、ふるさと納税の隆盛の一方で、納税されなくなった都心部の自治体が悲鳴をあげ始めました。東京23区だけで200億円の減収ともなれば、無理もありません。

総務省も無視することはできず、今年の3月末に「(過度な)返礼品の見直し」を宣言。資産性の高い家電製品は不可、還元率は3割以下といった通達を行いました。

今後は本来の姿へと落ち着くべきところに落ち着いていくのでしょう。ある意味で恵那市の数字が基準です。豪華返礼品目当ての寄付金で潤っていた自治体の中には、それをあてにして設備投資したところもあるのだとか。平家物語の冒頭部分が耳の奥から流れてきますが、これもまたこれまでに何度も見られた「歴史は繰り返す」です。ブームに乗り遅れないようにという行動は時として軽挙妄動になります。地に足のついた、時勢に左右されない地道な活動こそ大切だということを学びましょうね。