始める前は不安で不安で仕方なかったアパート経営も、軌道に乗り始めると一安心。不労所得で左団扇で暮らす・・・とはなかなかいきません。それはそれで新しい悩みが始まるからです。
新しい悩みの代表が税負担。アパート経営のうま味の一つに、「収支は黒字、損益は赤字」というのがあります。つまり実際は収入>支出でも、税務上では利益<損失となるのです。このカラクリを支えているのが「減価償却費」と「借入の金利」で、この2つの経費を支出に加算することで、税負担を免れる、さらに不動産所得は他の所得との損益通算が可能ですから、給与所得等の分と相殺できるため、相乗効果は絶大です。所得税・住民税は累進課税ですから、高所得者ほどその恩恵は大きいです。
が、その恩恵も意外と早く終わります。今は元利均等返済が主流ですから、返済が進むと、経費として計上できる金利が少しずつ減少します。そうすると、いずれは利益>損失となり、損益通算のうま味もなくなりますし、さらに所得が増えるので累進課税のしっぺ返しが待っています。なかなかうまくいかないものです。
ということで、先を見据えた戦略が必要です。その第一歩としてよく利用されているのが、小規模企業共済。これは個人事業主や小規模な企業の経営者のための自主年金です。
仕組みとしては毎月一定額を掛金として支払い、死亡時に死亡退職金として受け取ったり、あるいは後継者に経営を引き継いだ時に退職金として一括あるいは年金形式として受け取ったりします。
この制度の魅力は掛金が全額所得控除となること。毎月の掛け金のマックスは7万円なので、最大で84万円の所得控除になります。疑似的な社会保険料ということなのでしょう。
今のご時世、金融機関に預けておいても金利らしい金利はつきません。その点では小規模企業共済も同じで、さほど運用益は高くありません。が、仮に所得税の負担税率が10%の人が加入すれば、10万円分の掛け金が10万円分の所得控除に変身して、結果1万円分の税負担軽減!何と利回り10%の運用と同じです。住民税の負担も考慮すれば、運用益はさらに良くなります。
高利回りをうたい文句にした金融商品を怪しいなあと思いながらも、ついつい手を出してしまう人が後を絶ちません。でも少し勉強すれば、こういった制度が見つかるものです。情報収集と取捨選択ってとても大事ですよね。
ちなみに死亡退職金として受け取る場合は、みなし相続財産として相続税の対象となるのですが、「500万円×法0定相続人の数」の非課税限度枠があります。銀行預金にはこのような制度はないので、同じ現金を遺すなら、こちらの方がより多くの現金を遺族の手元に遺せます。