今回は前回の続きです。

「拠出」が確定している年金、この意味は支払う掛金が確定しているということです。その一方で公的年金とは違って、給付は「未確定」です。我々がイメージする年金とは明らかに違うものですね。

ではなぜこのようなことが起きるのかというと、どんな方法で運用するかが各加入者の任意だから。投資信託には、日本株式に重点を置いたもの、あるいは外国の国債に重点を置いたもの、あるいはその両者をミックスしたものなど、非常に多くの種類がありますが、同じ1万円を毎月かけ続けても、運用対象が異なれば、各自で大きな差が出ることも珍しくありません。

しかも原則として60歳まで引き出しできません。59歳までは掛金総額の3倍まで資産が膨らんでいたのに、1年後にいざ引き出そうとしたら元本割れ、そんな可能性もあります。もちろんその逆も。なかなか手ごわい年金ですね。

もっともスイッチングといって、運用対象を定期的に入れ替えることができます。先ほどの例でいえば、59歳のときにリスクの高いものから低いものにスイッチングすれば、1年後の悲劇は起きないわけです。

このような年金が導入された背景には、終身雇用制度の崩壊、若年労働者の減少、といった状況により企業年金制度の維持が出来なくなったことがあります。そのため転職を繰り返しても、自己年金を設計できるようにしたわけです。またこの制度を導入したアメリカ(401Kプラン)で株価が上昇している原因を日本で調べたところ、この制度によって労働者から多額の掛金が毎月株式市場に流れ込んでいたからとも言われています。(今から20年以上前の昔話です。)

確かに株式市場の動向に左右されず、毎月一定の運用資金が株式市場に流入する、これは株式市場にとってありがたいですね。必ず買ってくれる人がいるという安心感がありますから。結果的に制度加入者以外の投資家の資金も流れ込みやすくなり、株価の上昇が起きやすくなります。日本銀行が大量にETFを買っていることで株価の上昇が起きやすい(又は下落に歯止めがかかりやすい)のも同じ理屈です。

現役世代は自分の老後に公的年金がもらえるのかどうか大きな不安を持っています。この制度に加入すれば解決するわけではありませんが、転ばぬ先の杖の1つとして活用を検討したいですね。