恵那市のような典型的な地方都市では、「職住近接」を意識する人はそれほど多くありません。名古屋市(を始めとした都市圏)への通勤人口が少ないからです。通勤時間30分以内の人が圧倒的に多いと思います。

しかし都市圏のオフィスへ通勤している人には常に意識する問題です。一番の悩みはやはりその通勤時間。往復30分と往復3時間なら、2.5時間×250日×30年で約781日分の差に相当します。これは約2年2ヵ月分、24時間計算の数値ですから、睡眠時間を考慮すると3年分くらい。確かに悩みますね。

ということで通勤時間の短縮を図るのですが、その場合は以下のような悩みがあります。

  1. 購入・賃貸いずれも高額になる。
  2. 自宅の近くで同僚や取引先の人と遭遇する確率が高い。
  3. オフィス街の近くは意外と不便。

1番と2番は説明するまでもありませんが、3番はなぜ?と思われた方もけっこういらっしゃるのではないでしょうか?

ではその種明かしをしましょう。オフィス街は商業施設、教育施設、医療施設が揃っているわけでもなく、いわゆる生活利便施設はあまりありません。お店というと、お弁当屋さん、コンビニ、飲食店、居酒屋・・・、昼間のランチ客、夜のアフター&接待用が主力です。駐車場も店の前に停めるというわけにも行かず、少し離れたところの有料駐車場利用が基本です。通勤時間は短縮できても、その他に費やす時間の方がかえって多くなってしまい、結果として自分の自由時間が減ってしまうことも間々あります。しかも経済的出費が大きく増えた上で、です。これではたまりませんね。

最近では、「育住近接」という言葉が広がり始めています。これは読んで字のごとく、保育園や託児所といった育児施設と職場を近接させる暮らし方です。駅の構内や目の前にそういった施設を設けることで、出勤途中あるいは退社時での時間負担を減らすことが出来ます。都心部では上の子供と下の子供が別々の保育園にしか入れないことも珍しくないようですから、相当なメリットでしょうね。

ところで「育住近接」に意外な旗振り役がいるのをご存知でしょうか? 何と鉄道会社!です。昔からある鉄道会社のスキームはこうです。

  1. まず路線を引く終点に魅力的な施設を作る。(代表例:阪急の宝塚)
  2. 路線のイメージを良くして、次にその沿線の分譲事業を手掛ける。
  3. 鉄道の利用者が増えるにつれて、分譲地の値段が上昇する。
  4. 路線の中核的な駅の構内や駅前の一等地に百貨店を作る。

もちろんフェーズ0の路線沿線の大規模な不動産買収は欠かせません。これの21世紀版が育児施設の設置による沿線の魅力アップということでしょうね。鉄道利用者を増やす或いは維持していくためにはハード面だけではダメだと思い知らされます。分譲地の魅力を上げるにはどうしたらいいか、学ぶところは多そうです。