今となっては当たり前の発想も、当時は革命的な発想だったものは枚挙にいとまがありません。例えばコピー機やプリンターのインクをカートリッジ式に。これはCANONが生みの親なのですが、その発想に至った経緯というのが、

  1. (開発を始めた)当時はオフィス需要が主体だったが、いずれ小型化、高機能化に伴い、家庭需要が生まれる。
  2. 家庭での需要に対応しようとすると、消耗品部分へのメンテナンスに対応できる全国単位のきめ細かいサービス体制が必要。
  3. しかしながら地方の町の電気屋さんレベルで対応するのは困難。
  4. だったらいっそのことメンテナンスが不要になる仕組みにしよう。
  5. 使い切ったら終わりのカートリッジ方式にして、購入者は販売しているところで交換部品を手に入れてもらう。

と多少は脚色していますが、これが大まかな流れで、世に出たのは1982年のこと。当時の驚きが目に浮かぶようです。

さて住宅業界でも似たようなもので大きな革命が起きようとしています。それがメンテナンスフリー外壁。今や当たり前となったサイディング、伝統的な土壁も悪くはないのですが、石目調、木目調といった質感、そして色の選択肢の豊富さ、さらには耐火性や遮音性といった現代的なニーズも相まってサイディングが主流となっています。一定期間経過すれば色あせてしまい汚れが目立つようになりますが、張り替えたり、塗装をしたり、あるいは高圧洗浄といった手段を使うことで、比較的短期間の工期で、お色直しをすることが出来るのが魅力です。

ただしその費用は思いのほか高額です。本来の作業だけならいいのですが、建物の周囲に足場を組み、そして終わったらそれを撤去する、それだけでも大きなお金がかかります。そこでメンテナンスフリーという発想になるのは自然な流れでしょう。

しかしながら建物が存続している間、全期間無料というわけにはいきません。考え方としては、

  1. 耐久性を高めた劣化度の低い外壁の使用
  2. 光触媒などの手法を使った、汚れが落ちやすい外壁の使用
  3. 庇を長くして、外壁に対する日光や風雨の影響を低減させる

といった工夫でコストを出来るだけ抑えるようにしようという狙いです。まあそんなうまい話はありませんよね。

また外壁そのものだけに対策をしても実はダメ。継ぎ目の部分に用いるシーリング、サイディングを下地に固定する時に用いた釘の部分などなど、それ以外の部分の劣化は避けられません。

コピー機のようにいかないのは、工場の中で完成するものでなく、太陽の下、雨風に晒される住宅だからでしょうか。