不動産業界、今年のニュースベスト10を発表するとしたら、まず間違いないなくランクインするのが、今日ご紹介する「法定相続情報証明制度」です。初めて聞かれた方も多いと思いますが、今後の不動産業界だけでなく多方面に渡って大きな影響を与えそうなものですので、サワリだけでも知っておいた方がいいですね。

まず制度が作られた経緯から。

  1. 放置された空き家・空き地の増加
  2. 行政側が何かしようと思っても、所有者の連絡先が分からない。
  3. 所有者が死亡していることもよくあるが、相続登記がされていない。
  4. 法定相続とみなして対応しようとすると枝分かれした孫やひ孫の分まで各種の手続きが必要。

と、まあ少しでも放っておくと問題が山積み。名義を移そうとすると、登録免許税や場合によっては相続税、移した後は固定資産税・都市計画税、そして維持管理費がかかるので、避けたくなるのも分からないではありません。不動産が右肩上がりの時代には誰がそれを貰うかで骨肉の争いがありましたが、今は都市圏の一部を除けば右肩下がりの時代なので、負担の押し付け合いというか、出来る限り見て見ぬふりをする風潮が強いです。

そんなこんなが積み重ねって相続登記未了状態と思しき所有者不明の土地が増え続け、一説には九州よりも大きいんだとか。さすがに手を打たないといけませんね。

相続は手続きに係る負担が半端ではありません。原則として法定相続人全員から遺産分割協議書への捺印&印鑑証明書受領など、相続人の多いケースは最初からやる気をなくしてしまいます。疎遠になった状態で遠隔地に居住する権利者から同意をもらうのがどれだけ大変なのかは、やったことがある人でないと分からないくらいの負担です。

それを軽くするためのこの制度は、円滑でスピーディーな相続の実現に向けての第一歩。不動産業界喫緊の課題でもある放置空き家や放置空き地の再利用の促進にもつながるものと期待されています。(所有者不明だとそもそも再利用したくても所有者の同意が得られません。また所有者死亡で全国散り散りになった法定相続人が20人もいたら、これまた再利用は事実上不可能です。さらに相続登記を完了させたとしても、それまでに費やした労力と諸経費に見合うだけのリターンが得られるかというとこれまた疑問です。)

こうした問題の原点は戦後の民法改正による法定相続制度の発足から。戦前は長子が家督権を相続する=それ以外は財産をもらう権利一切なしで、ある意味非常に分かりやすい制度でした。一説にはアメリカが日本兵の勇敢さの根源を探って次男以下の相続権なしが捨て身の行動が出来る理由だと分析。結果、今では当たり前となった兄弟全員の法定相続権、そして妻にも法定相続権が認められたわけです。(ちなみに妻の法定相続分はその後の法改正で増加(当初:3分の1⇒2分の1)しました。古き良き日本女性が絶滅危惧種となった最大の理由・・・かもしれません。)

と、横道に逸れすぎました。これからは年間の死亡者数がどんどん増える時代と言われています※。相続の発生件数も当然右肩上がり。この制度の需要もだんだん増えていくでしょう。大きく育ててほしいですね。

※直近の年間死亡者数は約130万人。推計によれば2040年まで増え続け、ピーク時には年間166万人に達すると思われる。