百人一首で一番多く詠まれている季節は? お察しの通り「秋」が16首で断トツの1位。(第1首目が「秋の田の~」で始まるのはとても象徴的ですね。)春は6首、夏は4首、冬は6首なので、春+夏+冬=秋というわけで、歌心をとてもゆさぶる季節であることは明らかです。秋は人生でいえば老いに入った落日の季節でもあり、自ずと人生の終わりを強く意識させるからでしょうか。さらにいうと、「秋のつるべ落とし」という言葉にもある通り、日がどんどん短くなっていきます。日没時間が早くなるのも「何かの終わり」の暗示として同様の感情を抱かせます。それにだんだん寒くなっていくことで植物は枯れ始め、それも死と結びつきますし、人の死に直面する機会も増えます。

では実際のところはどうなのでしょうか? 日本で月別の死亡者数の統計をとると、1月をピークに6月をボトムにしたU字型のグラフとなります。より正確には6月と9月がボトムで7月と8月で少し盛り上がる真ん中部分の山が小さなW字型です。こういう話をし始めると気になるのはその逆、つまり月別出生者の数字ですが、皆さんは日本では何月が一番多いと思いますか?

正解は9月。グラフの形は1月をボトムに2月で少し上がって3月でまた下がり、そこから9月までは右肩上がりでそこから11月まで右肩下がりで、12月でまた上がる、そんな形状です。(若干補足すると1日当たりで一番多いのが9月です。1ヵ月が31日ある8月の方が総数では多いようです。)

9月といえば秋の入口。なぜ多いのかは神のみぞ知る話ですが、生まれる子供の数がだんだん少なくなるのも、人生の終わりを脳裏に描く絵の具の1つになるのかもしれませんね。