先日、法務省が「相続登記の状況」についての調査結果を公表しました。大都市では相続問題がより深刻なせいか、比較的相続登記がきちんとされていましたが、宅地であっても

  • 最後の登記から90年以上経過・・・0.1%
  • 最後の登記から70年以上90年未満経過・・・0.5%
  • 最後の登記から50年以上70年未満経過・・・5.0%

というのですから驚きです。もちろん若いころに相続して今も存命中の方もいるでしょうから、少しはこういう例があるでしょうが20件に1件以上となると、『都心部では土地の値段が高いから、遺族間で揉めて登記できないんだろうな』と勘ぐってしまいます。

では恵那市のような地方都市はどうでしょうか。まずは数字から。

  • 最後の登記から90年以上経過・・・3.1%
  • 最後の登記から70年以上90年未満経過・・・2.6%
  • 最後の登記から50年以上70年未満経過・・・4.8%

とこんな具合です。相続税が発生すれば必要に迫られて登記をする人もいるでしょうが、そうでないと相続登記そのものの必要性を感じていない人も多いでしょうから、この数字は納得できますね。

地方都市ならではの理由として挙げられるのは、「相続人の数が多い」というのもあります。機械化が進む以前の農家というのは「数が正義」でしたし、戦時下なら兵役に就く人のことも考慮しないといけません。必然的に兄弟が増えることになります。

たとえ1人でも捺印を貰えないと遺産分割協議は成立しません。仲の悪い兄弟から貰えないこともよくあります。また時間が経過したことで親族間の結びつきがどんどん疎遠になる、さらに兄弟×その子供×その孫というように、印鑑をもらう相手が幾何級数的に増えていき、もう一個人のド根性では解決不能になります。結果、今後は放置物件がどんどん増えていくでしょう。

たとえ相続する権利が1万分の1でも捺印を必要とするのか、それとも別のやり方で解決できるようにするのか。個人的な見解では、遺産相当分の現金を法務局に供託すればOKというようにした方が良いと思います。もちろん一定の上限を設けた上で。昔の家督相続(戦前の長子一括相続)の時代は簡単で良かったですね。