昭和、とりわけ高度成長期~バブルの時代というのは、「大量生産・大量消費・大量廃棄」というのが主流の考え方でした。公害が社会問題化して以降は少しずつその考え方が否定され、環境配慮・リサイクルという今では当たり前の仕組みが導入されるようになりました。

住宅も同じです。もともと人口増・世帯増時代は粗製乱造のそしりを受けつつも、市場へ大量供給することが至上命題だったわけですが、本格的な人口減少時代を迎え、「空き家問題」が社会問題化しているのは、皆さんご存知の通りです。

ということで、政府も新築住宅に対する各種の優遇措置は継続しつつも、既存の住宅、つまり中古住宅の流通により重きを置くような政策にシフトしています。既存のストックの利用が広がれば、大量の空き家を再利用しようという動きが広がり、解体時に生じる産業廃棄物に対するコストも軽くなりますから。

そんな動きを象徴する制度が新しく誕生しました。それが「安心R住宅」。かいつまんで翻訳するなら「安心して購入できる中古住宅」のことです。

もともと不動産というのは目に見えない部分が非常に多いものです。土の下、外壁と内壁の間、床下・・・、全てを確認することは不可能で、そのリスクを含めて取引しているわけです。新築住宅に比べて人気が低い理由の1つです。

それを少しでも払拭できれば、というのが以下の条件をクリアした「安心R住宅」。

  • 新耐震基準同等の耐震性を有する
  • 建物状況調査の実施、構造上の不具合および雨漏りがない(広告段階で補修が完了している)
  • 購入者の求めに応じ既存住宅売買瑕疵保険を付保できる用意がなされている

また修繕・維持管理の履歴等の情報開示を購入者側から求めることができる、ともされています。

土地が右肩上がりで上昇していた時代は、建物の品質はそれほど重要視されていませんでした。建物の価値の減少速度を、土地の価値の上昇率が遥かに上回っていたからです。

今の空き家の多くは、そんな時代の落とし子でもあり、「修繕費が思いのほか大きくかかる」ため、修繕にお金をかけても、その分を売買価格に上乗せできないのが実状です。問題解決の出口はまだまだ遠いですね。