最近、格差社会を象徴するニュースを耳にしました。それは「地方金融機関からの資金流出」というものです。流出先は都心部の金融機関ですが、なぜこのような現象が起きているのでしょうか?

答えは相続。例えばこんなケースです。被相続人=地方で独居状態の親、相続人=都心部で生活する子供、これで相続が発生すると、地方の金融機関に預けてある親名義の預金が、都心部に住む子供たちの口座へと振り込まれます。仮に親名義の預金が1000万円だったとして、こんなケースが年間100件あれば流出額は10億円、10年で100億円にもなります。地方の金融機関にとって、これはとても深刻な問題です。

というのも、住宅ローンをはじめ、融資の源となっているのは、こうした預金の残高。預金量が多ければ多いほど、融資に対して積極的な行動がとりやすくなります。例えば、皆さんが誰かからお金を貸して欲しいと頼まれたとき、手元にあるお金が多いほど、貸しやすいですよね。(他人から預かっているお金ではありますが。)

ここ数年、空き家問題がクローズアップされています。問題の根っこは同じで、若い世代が中心部に職をもとめ、そこで暮らし始め、地方の実家を承継するものがいない、それを解決しないと、この預金流出問題を止めることは出来ないでしょう。しかし、それはとても難しい問題です。

最後にこの問題を大きさを具体的な数値で。家計金融資産は推計で約650兆円、うち約120兆円の資金が相続に伴い移動すると見込まれています。ちなみに首都圏では31兆円が純粋に増加すると見込まれています。