栃木県、岐阜県に住んでいる人にとっては縁の薄い場所です。普通に行くなら東京経由なのでしょうが、よほどのことでもない限り、東京で事足りますから、わざわざ行く必要もないですから。日光東照宮を訪れる、例えばそんな目的でもあれば別ですが。

そんな栃木県の県庁所在地である宇都宮市。この宇都宮市に錬金術師が現れたのをご存知でしょうか? 5年間で価値を3.5倍にしたのです。

始まりはとある不動産会社の方。その方は建築家としての顔も持っていたのですが、宇都宮市内の賑やかな場所に事務所を構えていました。でも手狭になってきたことに加えて、もっと静かな環境で仕事をしたいということで、同じ市内でも静かな、言い方を変えれば「あまり活気のない」商店街に事務所を移されました。当時の賃料は、2000円/坪だったとのこと。

そこからが錬金術で、活気のない商店街にやる気のある人たちを呼び込みました。するとお客様がどんどん集まるようになり、結果として街としての価値を上げることに成功しました。今では賃料が7000円/坪にまで上昇しました。

もちろんそこに至る過程には苦労がありました。一番大変だったのは「現状維持で良い」と考えている店主たちに「第三者に貸しても良い」と思わせることでした。特に最初に誘致に成功したカフェは、本当に大変だったようです。

全国の地方都市全般に見られる現象ですが、かつて人通りが絶えなかった駅前の商店街が次々とシャッター通りに変わっています。車社会になったこと、そして郊外の大規模な小売店に対する競争力の低下などなどが理由です。今回の再生事例がどんなところでも応用できるとは思いませんが、示唆に富んでいることは間違いありません。

今後、全国各地の商店街の人たちの間で宇都宮詣がしばらく流行しそうです。ちなみにその場所は「もみじ通り」と言います。このネーミングに惹かれて出店を決めた方もきっといるでしょうね。名前って本当に大切です。