皆さんは自動車を購入する時、お金はどうやって用意されましたか? 多くの方が「自動車ローンを組んだ」とお答えになるのではないでしょうか。特に新車の場合は。
そんな自動車ローンの世界で、すこしずつ認知が広がっているのが「残価設定型ローン」と呼ばれるもの。購入時に将来の下取り価格を予め決めておいて、その分マイナスした金額でローンを組むという方法です。ローンの借入額が大きく減りますから、当然返済額も少なくなります。高級車(・・・もともとの価格が高い)やブランド力のある車(・・・下取り価格を高く設定できる)の場合、より大きな恩恵を受けることが出来ます。
それに感化されてでしょうか、つい最近になって「残価設定型住宅ローン」への取り組みが始まりました。先鞭をつけたのは、「北海道R住宅ストック流通推進プロジェクト」と呼ばれるものです。
では仮に新築時の価格が2500万円の住宅を、10年後に1500万円で買い取り保証するケースを考えてみます。
- パターンA・・・借入額2500万円、金利2.5%、30年返済
- パターンB・・・借入額1000万円、金利2.5%、10年返済
この2つ(いずれもボーナス返済なし、元利均等返済)を比べた場合
- パターンA・・・毎月返済額 9万8780円、総返済額 約3556万円
- パターンB・・・毎月返済額 9万4270円、総返済額 約1131万円
とご覧のように残価設定型のパターンBの方が毎月返済額が少なくなりましたね。では仮に利用したとして10年後にはどうなるのでしょうか?
今想定されている出口戦略は、
- そのまま住み続ける・・・残価分について改めて住宅ローンを組む。
- そのまま住み続ける・・・残価分を現金で支払う。
- 住み続けない・・・・・・買い取り保証額で買い取ってもらう。
こんなところです。毎月返済額が少ない分を少しずつ貯めれば、購入資金の頭金くらいにはなりそうですね。
しかし、この制度には幾つかの問題点があります。1つは買い取り保証を誰がするのか、という問題です。毎年10件程度の保証でも、必要な資金は1億円を軽く超えます。何より10年を待たずに保証した会社がつぶれてしまう可能性もあります。
次に買取の価格設定。買い取り価格を高く保証しないと、「毎月返済額が少なくなる」メリットが生じませんし、かといって買い取った会社も自分たちで住むわけではないので、転売や賃貸といった形をとらざるを得ません。そうなると、「安く買い取る」流れになるのは必然で、このあたりの匙加減が本当に難しいですね。10年後に土地の価格が2倍になる、そんな時代なら良かったのですが・・・。
と不安要素も大きな制度ですが、このプロジェクトには国土交通省から補助金が出ることも決まっています。成功すれば、住宅の品質に対する安心感(=買い取り価格を高く設定できる理由)が中古住宅の流通促進はもちろんのこと、作る側のレベルアップにもつながるので、関係者としては温かく見守りたいと思います。