一般的に不動産業を営む場合は宅地建物取引業に該当するため、県あるいは国から免許を貰わないといけません。最低でも専任の宅地建物取引士を従業員5人に対して1人以上など、様々な厳しい基準をクリアする必要があり、営業するだけでも物心両面で相当多くの負担を強いられます。

その一方で、宅地建物取引業法では例外的に幾つかのケースにおいては免許不要で宅地建物取引業を大っぴらに出来ます。代表的なものとしては、

  • 国、地方公共団体
  • 信託銀行

があります。この地域では馴染みが薄いですが、銀行の中でも特殊な位置づけの信託銀行は堂々と不動産業が出来るのです。

が、この不動産業を一般の金融機関にも認めようという動きが出てきています。これは当の銀行自身からで、具体的には不動産仲介業をやりたい!ということです。

銀行業界には異業種から進出している例が幾つか見られます。逆に銀行も、投資信託の販売、保険の販売など、本来は証券会社や保険会社の業務を垣根を越えて、どんどん手掛けています。そういった意味ではある意味でお互いさまなのですが、不動産業界が銀行業へ進出する動きはほとんどないのに、なぜ銀行業界は不動産業への進出を目論んでいるのでしょうか?

この動きの背景には、銀行本来の収益の柱となるべき融資の分野で、不動産業の占める比率が少しずつ高くなっていることがあるようです。以下の数字をご覧下さい。

【金融機関(官・民)による不動産業への融資残高】

  • 2015年3月末:約81兆円
  • 2016年3月末:約86兆円

たった1年でこれだけのお金が流れ込めば、都心部における地価の上昇もうなずけます。その波に乗っかろうということで、例えば投資用の収益物件の購入について、融資だけで終わるのはもったいない、できれば仲介料で手数料も・・、そんな思惑のようです。

1棟1億円、個人向けの収益物件ではこんな情報が右から左にどんどん流れています。これをまとめた場合の手数料は一方からだけでマックス306万円(税抜き)。確かに魅力的ですね。

金融機関は不動産という担保を原資として、融資を行います。従ってどの業界よりも正確かつ迅速に融資の返済状況、家賃の入金状況を知ることができます。その圧倒的優位を生かされると、不動産業界は正直なところ勝負になりません。いずれは認可されるのでしょうが、そのXDAYがいつなのか、非常に気になります。