前回のブログでは、委託者(お願いする人)と受託者(お願いされる人)という二者間で信託制度を説明しましたが、実際は受益者(利益を受ける人)を加えた三者間による制度というのが、より正確です。もっとも「委託者=受益者」となる形式も大丈夫ですので、それほど難しく考える必要はありません。

ではこんな事例を考えてみましょう。

  • Aさん(委託者)…Bさんのお母さん
  • Bさん(受益者)…Aさんの子供、障がい者(成年被後見人)
  • Cさん・・・Bさんの弟。Aさんとは離れたところに居住
  • Dさん(受託者)…Bさんの成年後見人

Bさんの面倒はAさんがみていますが、Aさんに万一のことがあると、Bさんがどうなってしまうのか、容易に想像がつきますね。Cさんに期待するのは酷です。

そこで信託の出番です。Aさんの存命中はAさんが委託者として、Dさんに財産の管理をしてもらいます。ここでは分かりやすい事例としてアパートを考えてください。アパートはAさんの所有物であっても、それによって発生する収入は受益者であるBさんのものになるわけです。そしてAさん亡き後は、Cさんが委託者となるようにしておけば、Aさんの生前と変わらぬ状況が維持できます。面倒をみてもらうために外部に払う費用は生前からの積み立てだったり、アパート収入で賄えば大丈夫です。

通常の相続、あるいは遺言では財産分与にどうしても重きが置かれて、「相続人のその後の生活設計」まではなかなか配慮できません。信託は魔法の杖ではありませんが、「長生ききリスク」に対する「転ばぬ先の杖」としての役割は充分期待できるでしょう。